甲状腺の病気は女性に多く、代表的なものにバセドウ病(甲状腺機能亢進症)と橋本病(甲状腺機能低下症)があります。バセドウ病と橋本病はどちらも、細菌などから自分の体を守るための抗体が、自分の体を攻撃してしまう自己抗体となり、甲状腺に影響して発症します。
甲状腺は、のどぼとけの下辺りにある、蝶が羽を広げたような形をした小さな臓器です。食べ物に含まれるヨウ素を原料に、全身の臓器や細胞の代謝を促す甲状腺ホルモンを作り、血液中に分泌しています。そのため甲状腺に異常が起こるとホルモン分泌の調節がうまく行われなくなり、さまざまな症状が体に現れます。
バセドウ病の場合、甲状腺ホルモンの分泌が過剰に多くなり、首の腫れと、眼球が突出する目の異常が特徴的な症状です。そのほか、息切れ、動悸、手指や足の震え、汗をかく、痩せるなど、全身の代謝が高まり極端に暑がりになります。一方、橋本病の場合、甲状腺ホルモンの分泌が少なくなり、首の腫れ、無気力、もの忘れ、筋力低下、疲れ、肌が乾燥するなど、全身の代謝が低下するため、夏でも暖房をつけるほど寒がりになります。
どちらの場合も治療は基本的に薬物療法となります。バセドウ病では主に甲状腺ホルモンの過剰分泌を抑えるお薬(メルカゾール)、橋本病では甲状腺ホルモンそのもの(チラーヂンS)を服用します。なお、橋本病の人が、お薬と同時にカルシウムを含むお薬やサプリを摂取すると、チラージンSの吸収を阻害し、お薬の効きが低下して病態を悪化させる可能性があるので注意が必要です。甲状腺の病気は長期的な治療が必要となるため、定期的に受診を続けることが大切です。